ドキュメンタリー映画作家
『Lifers ライファーズ 終身刑を超えて』『トークバック 沈黙を破る女たち』を監督し、『プリズン・サークル』は文化庁映画賞・文化記録映画大賞。著書『プリズン・サークル』(岩波書店)、『根っからの悪人っているの?』(創元社)に加え、『ジャーニー・オブ・ホープ―被害者遺族と死刑囚家族の回復への旅』(岩波現代文庫)が12月刊行。
「犯罪をした人が立ち直るには?」「被害からの回復に必要なことは?」「修復的正義(Restorative Justice)を日本に広めるには?」といったことをテーマに研究を続けている。専門は社会福祉(ソーシャルワーク)。元上智大学教員。現在は法務省で更生保護の最終段階に携わる仕事に従事。
近刊本に「犯罪被害と『回復』―求められる支援」(現在人文社)
渋谷インクルーシブシティセンター〈アイリス〉職員
不妊をきっかけに「社会の子育て」に関心を持ち、子どもや、子ども達の未来に関わる分野(教育・環境・ジェンダー等)で活動するN P OやN G Oの広報に携わる。現在は渋谷インクルーシブシティセンター〈アイリス〉職員。プライベートでは保護司としても活動中。
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす 4 人。そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける…。
監督・脚本︓フラン・クランツ 『キャビン』 (出演)
出演︓リード・バーニー TV「ハウス・オブ・カード 野望の階段」シリーズ
アン・ダウド 『ヘレディタリー/継承』
ジェイソン・アイザックス 『ハリー・ポッター』シリーズ
マーサ・プリンプトン 『アナと雪の⼥王2』
111分/アメリカ/英語/2021年
15:00~16:55 映画上映
16:55~17:05 休憩
17:05~17:50 トークセッション
暴力事件があったとき、傷つくのはその暴力行為の被害者だけではありません。被害を受けた人の家族や友人、知人、事件を目撃した人、そしてあまり語られることはありませんが、加害者の周りにいる人もやはり同じように傷つき、苦しむことが少なくありません。またコミュニティ内の安心・安全が脅かされたと感じる人もいるかもしれませんし、事件をきっかけにコミュニティ内の関係性に影響が出る場合もあります。
突然の事件により息子を亡くし大きな傷と痛みを抱えた被害者遺族と、多くの被害者を出してしまった息子の事件に呵責を抱きつつも、被害者家族と同じように大切な子どもを亡くした喪失感に苛まれる加害者家族。対極にいる2つの家族がひとつのテーブルを囲み対話をする様子を描いたのがこの作品です。あり得ない設定に思われるかもしれませんが、被害者側と加害者側の対話の場を設ける「修復的司法」と呼ばれる取り組みは実際に存在し、オーストラリア、アメリカ、ノルウェーなどで実践されています。
修復的司法は犯罪を社会における”損害“と捉え、加害者と被害者と地域コミュニティという3者による対話を通して解決策を探ろうとする考え方とされています。司法的な解決がされたとしても、それで事件が終わるわけではありません。残された人たちは答えのない問いや、言葉では表現しきれない思いや気持ちと共に人生を続けていかなくてはなりません。修復的司法では現行の司法制度だけでは解消できない葛藤や苦しみに対して、当事者同士が対話をすることで向き合い、互いの精神的な回復、立ち直りを図り、償いの方法や赦しについて考えていきます。日本ではまだまだあまり知られていないこの取り組みについて、アフタートークではお話を伺います。