東邦大学看護学部/大学院看護学研究科/公衆衛生看護学研究室 教授
高齢者虐待、セルフ・ネグレクト、ゴミ屋敷、孤立死、保健師教育について主に研究。日本地域看護学会副理事長、日本公衆衛生看護学会理事等、看護学の教育・研究に関わる複数の委員や千代田区高齢者虐待防止推進委員会委員長、渋谷区介護保険運営協議会委員長等、自治体の審議会等委員を務める。編著『セルフ・ネグレクトのアセスメントとケア ツールを活用したゴミ屋敷・支援拒否・8050問題への対応』(中央法規)他。
1977年、フランス・パリ生まれ。ロンドン育ち、東京大学中退。ミュージシャン、ラッパー。国立民族学博物館客員教授。吉田正樹事務所所属。2010年に脳梗塞で倒れ、合併症で左目を失明。以後は眼帯がトレードマーク。バンド、ベーソンズのボーカルとしてカンボジア、香港、モンゴルなどでライブ。自身のYouTubeチャンネルでプチ鹿島とのヒルカラナンデスや各界知識人を迎えたトーク番組を配信している。ダースレイダー名義の最新アルバム「ラップの鉄人」(2023)。著書「武器としてのヒップホップ」(幻冬舎)「イル・コミュニケーション」(ライフサイエンス)など。2023年、映画「劇場版センキョナンデス」「シン・ちむどんどん」(プチ鹿島と共同監督)公開。
恵比寿駅から半径2km以内の取材にこだわる地域密着型WEBメディア「恵比寿新聞」編集長。2021年コロナ禍の中で区民の悩みを区民が解決するなんでも相談所「ふくみみ」の活動をスタート。
恋人アランを亡くしたショックから、現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに頼っている。そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え心が荒みきっていた…。
監督:ダーレン・アロノフスキー
原作・脚本:サム・D・ハンター
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
117分/アメリカ/英語/20122年/PG12
10:00~12:00 映画上映
12:00~12:10 休憩
12:10~12:55 トークセッション
人生をあきらめたかにも見えるこの映画の主人公、チャーリー。命の危険が迫っていることを理解しつつも治療を受けることを頑なに拒否しています。それが彼の決断なのだとしたら、チャーリーが抱えている問題は”自己責任“の結果なのでしょうか?”自己責任“という言葉は、2004年の流行語大賞にトップテン入りして以来、様々な場面で便利に使われてきました。自分の決断、行動に責任を持つ、一見当たり前のように聞こえますが、私たちの決断や行動は純粋に自分の意思によるものだけではありません。人によって選べる選択肢の幅には差があるからです。
生きる意欲を失い、チャーリーのように深刻な健康の問題があっても治療やケアをしなかったり、サポートを拒絶したりする場合”セルフ・ネグレクト“という問題の可能性が潜んでいるかもしれません。近年少しずつ知られるようになったセルフ・ネグレクトとは、健康、生命および社会生活の維持に必要な個人衛生、住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること*とされています。これまで認知症などにより自分のケアをできなくなった高齢者の問題とされてきましたが、10代~30代の若者の間でもセルフ・ネグレクトの問題を抱える人が増加しており、セルフ・ネグレクトが影響したとみられる孤独死も広がっています。
セルフ・ネグレクトの状態に陥るリスク要因の中には、チャーリーのように大切な人を亡くすといった喪失体験や社会的孤立や孤独といったものもあります。つまり年齢やジェンダーなどに関わらず、誰にでも起こりうるということです。問題を抱えていてもSOSを出さない人は、SOSが出せない人なのかもしれません。そのSOSを見逃さないために何ができるのか、また気が付いたときにどんな対応ができるのか、そしてコミュニティとしてどんな取り組みができるのかなどを考えていきます。
*野村祥平・岸恵美子:高齢者のセルフ・ネグレクトの理論的な概念と実証研究の課題に関する考察